安藤忠雄の『連戦連敗』は、心にキックが入る。

 

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90年代のある時、この建築家を知った。大阪の茨城市にある通称「光の教会」の建設過程を追ったNHKのドキュメンタリーだった。

 

「光の教会」は、外の世界・太陽・光と建物内の世界・教会・祈りが見事に連結され、シンプル・簡素であるにも関わらず「教会」という建築物が持つべきであろうものが、豊かに、美しく表現されていた。

 

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彼に興味を持って、『連戦連敗』を読んだ。すると、もっと深い興味に至る事柄が次々と記されていた。

 

 

若い頃にプロボクサーであったこと。

 

高校卒業後大学へは行かず、家具の製作やインテリアの設計などで、何とか生計を立てていたこと。

 

そんな経済的に苦しい中でも、たとえ食事を1回抜いても本や勉強にはなるべく金を遣い、欧州を放浪して著名な建築を見てデッサンして歩き、全く独学で建築を学んだこと。

 

建築家として事務所を開いた当初は全然仕事がなかったこと。

 

暇なので、依頼主のいないまま自分でプロジェクトを考えて設計し、模型を作り、自分自身で批評する、孤独な闘いを始めたこと。

 

このとき、思い切っていくつかのコンペに挑戦し、現在(本作出版時)に至るまで連戦連敗であること。

 

しかし創造は、逆境の中でこそ見いだされるのであって、ルイス・カーンも、ル・コルビジェも、菊竹清訓も、磯﨑新も、黒川紀章も、つまり現在では建築史上に残る巨人達も、同じような逆境の中で創造の翼を得たのだ、ということ。

 

安藤が自分の事務所を開いてから7年目、通称「住吉の長屋」という小さな個人住宅で、日本で最も大きな「日本建築学会賞」を獲得し、広く世の中に知られる存在になった。