教育において暴力とかパワハラが悪だとすると、齋藤秀雄はどう扱われるんだろう?という疑問。

教育業界というか、教育界というか、あそこは、なんか昔っから同じこと言ってませんか?昔っからある同じ問題を解消してないっていうか。

 

いまだに学校でのイジメの話が問題になって、我々が学校に通ってた40年くらい前と同じような対応してるような気がするんですが、なんか科学的な研究して解決できないんですかね?ま、色々と試してはいるんでしょうが、外野から見てるとよくわかんないですね。

 

同じようなことが暴力とかパワハラの問題にもあって、教育に暴力とかパワハラがあるのは、本当に悪いことなんですかね?科学的に証明されたことなんですかね?

 

いや、教育における暴力とかパワハラが良いと言ってるわけじゃないんですが、科学的に証明されたことだとすると、齋藤秀雄はどう扱われるんだろう?という疑問がありまして。

 

齋藤秀雄は、音楽家&音楽教育者で、驚異的な実績を上げたんです。桐朋学園大学を創立した人です。

 

しかし、かなりパワハラが行われていて、宮澤賢治の『セロ弾きのゴーシュ』に出てくる、ゴーシュを怒って、叱って、怒鳴る楽長は齋藤がモデルだと言われています。

 

齋藤は、後述のように世界的な音楽家を輩出したんですが、その方々の述懐を読むと、いまだに恐いとか、夢に出てきて叱られるとか、相当なプレッシャーだったようなんです。

 

ですから、現代では教育者として存在できないタイプだと思うんですが、しかし、その実績は驚異的です。

齋藤秀雄は、もともとは主席チェロ奏者・指揮者として、戦前の新交響楽団(NHK交響楽団の前身)で活躍します。

 

当時の日本のオーケストラというのは、今と比べるとかなりレベルが低かったんだそうで、もっと子供の頃から、本格的な西洋音楽の教育を受けなければいけないということを痛感します。

 

そうして昭和23年に発足したのが「子供のための音楽教室」で、のちに桐朋学園大学に発展します。

 

以後、齋藤秀雄は演奏家よりも音楽教育家として活躍し、っつーか、教育者としてものすごーい実績を上げまして、えっらい数の世界的音楽家を生み出しました。列挙してみましょう。カッコ内は主な経歴、受賞歴です。

 

◆小澤征爾(ウィーン国立歌劇場音楽監督、ボストン交響楽団音楽監督)

◆山本直純(「オーケストラがやってきた」企画・音楽監督、映画『男はつらいよ』のテーマ曲作曲)

◆岩城宏之(名古屋フィルハーモニー交響楽団初代音楽総監督、メルボルン交響楽団首席指揮者)

◆若杉弘(ケルン放送交響楽団首席指揮者、東京都交響楽団音楽監督)

◆秋山和慶(東京交響楽団音楽監督、バンクーバー交響楽団音楽監督)

◆飯守泰次郎(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団常任指揮者、新国立劇場オペラ芸術監督)

◆黒岩英臣(山形交響楽団名誉指揮者、桐朋学園大学准教授)

◆井上道義(京都市交響楽団音楽監督、新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督)

◆尾高忠明(読売日本交響楽団常任指揮者、BBCウェールズ交響楽団首席指揮者)

◆汐澤安彦(東京佼成ウインドオーケストラ常任指揮者、二期会合唱団常任指揮者)

 

◆堤剛(ミュンヘン国際音楽コンクール第2位、ブダペスト国際音楽コンクール第1位、桐朋学園大学学長)

◆千本博愛(ハンブルク交響楽団・リヨン国立管弦楽団・ロンドン交響楽団(カナダ)・読売日本交響楽団の首席チェロ奏者を歴任、ウェスタンオンタリオ大学・メディスン・ハット・カレッジ教授を歴任)

◆安田謙一郎(チャイコフスキー国際コンクール チェロ部門第3位、ルツェルン音楽祭弦楽合奏団ソリスト)

◆岩崎洸(チャイコフスキー国際コンクールで3位、イリノイ州立大教授、桐朋学園大学院大学教授)

◆菅野博文(チャイコフスキー国際コンクールチェロ部門第3位、テンプル大学助教授、昭和音楽大学教授)

◆倉田澄子(藩陽音楽院教授)

◆徳永兼一郎(NHK交響楽団首席奏者)

◆林峰男(ベオグラード国際チェロ・コンクール第1位)

◆原田禎夫(日本音楽コンクールチェロ部門優勝、アスペン室内オーケストラ・ナッシュヴィル交響楽団の首席奏者、東京クヮルテットでコールマン室内楽コンクール第1位・ミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門第1位、イェール大学・トロッシンゲン国立音楽大学。上野学園大学 教授を歴任)

◆平井丈一朗(日本音楽コンクールで第1位特賞、カザルス国際チェロコンクール特別賞)

◆藤原真理(日本音楽コンクール大賞・チェロ部門第1位、チャイコフスキー国際コンクール チェロ部門第2位)

◆堀了介(NHK交響楽団首席奏者、東京音楽大学教授)

◆松波恵子(新日本フィルハーモニー交響楽団首席チェロ奏者)

◆山崎伸子(ソリストとして国内オーケストラと共演、東京藝術大学教授)

◆磯村幸哉(ミネソタ交響楽団)

◆木越洋(ミュンヘン国際音楽コンクール入賞、ジュネーヴ国際音楽コンクール・ディプロマ賞、NHK交響楽団チェロ首席奏者)

 

◆中村紘子(ショパン国際ピアノコンクール第4位、日本音楽コンクール第1位特賞)

◆江戸京子(ザ・フェニックスホール(大阪)音楽監督、フランス政府から「芸術文化勲章オフィシェ」授与)

◆瀬川(江戸)純子(毎日芸術賞、桐朋学園大学教授)

 

◆今井信子(ミュンヘン国際音楽コンクール最高位、ジュネーブ国際音楽コンクール最高位、デトモルト音楽大学・アムステルダム音楽院・ジュネーヴ音楽院教授を歴任)

◆安芸晶子(イェール大学教授、桐朋学園大学客員教授)

◆久保陽子(チャイコフスキー国際コンクール第3位、パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール第2位、東京音楽大学教授)

◆佐藤陽子(チャイコフスキー国際コンクール第3位、ロン=ティボー国際コンクール第3位)

◆数住岸子(カーネギーホールでデビュー、カザルス音楽祭、アスペン音楽祭にソリストとして参加)

◆徳永二男(チャイコフスキー国際コンクール ディプロマ賞、NHK交響楽団コンサートマスター、国立音楽大学・桐朋学園大学・洗足学園大学 教授を歴任)

◆原田幸一郎(東京クヮルテットでコールマン室内楽コンクール第1位・ミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門第1位、桐朋学園大学教授、洗足学園大学客員教授)

◆堀伝(NHK交響楽団コンサートマスター)

◆前橋汀子(17歳でレニングラード音楽院に留学以後、国際的なソリストとして活躍)

◆森悠子(フランス国立放送管弦楽団、リヨン・オペラ座管弦楽団コンサートマスター、リヨン国立高等音楽院助教授)

◆和波孝禧(ロン・ティボー国際コンクール第4位、カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール第2位)

◆潮田益子(チャイコフスキー国際コンクールにおいて第2位、エリザベート王妃国際音楽コンクール第5位、ニューイングランド音楽院教授)

◆磯村和英(東京クヮルテットでコールマン室内楽コンクール第1位・ミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門第1位、イェール大学音楽院教授)

◆名倉淑子(東京クヮルテットでコールマン室内楽コンクール第1位・ミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門第1位、バンベルク交響楽団ゲストコンサートマスター、フェリス女学院大学教授)

◆徳江尚子(比佐子)(パガニーニ国際コンクール第4位、ロン=ティボー国際コンクール第6位)

◆藤川真弓(ベルギー国際音楽コンクール1位、チャイコフスキー国際コンクール2位)

 

えっらい数ですね。ウソみたいな実績です。

 

このように驚異的な実績を生み出した齋藤秀雄の教育法の根源は、音楽を科学的なものにして生徒に伝えようと努力したことのようです。具体的には、言語学の手法を援用しています。父親が明治・大正期を代表する英語学者・教育者である斎藤秀三郎だからでしょう。

 

齋藤秀雄の父は、現在の正則英語学校(現在の正則学園高等学校)を創立した人で、当時の英語学習者必携の『斎藤和英大辞典』他各種辞書を作った人です。

 

ですから、

 

「音楽には主語と述語があり、動詞と形容詞がある」

 

という話になります。

 

「バッハは古語だから「御座無候(ござなくそうろう)」みたいな候(そうろう)文だけど、ベートーヴェンは途中から現代文になるから「~ではございません」ていうことになる」

 

みたいな、そーゆーようなことを言ってたそうです。

 

なるほど。わかりやすいです。

 

ただ、えっらい怒って、叱って、怒鳴る人だったそうです。特に男子生徒に。

 

高校生の小澤征爾はストレスで十二指腸潰瘍になったそうですし、世界的なチェロ奏者になった原田禎夫でも斎藤がトラウマになって、チェロ奏者として高名になってからカウンセリングに通ったことがあるそうです。

 

齋藤秀雄ご本人も亡くなる前に反省していたそうですが、しかし、どうなんすかね?それが実績を上げるのに役だったかもしんないですよね?

 

いや、先述のように、教育における暴力とかパワハラが良いと言ってるわけじゃないんですよ。ただ、それで実績が上がるんなら、それを選ぶ自由があってもいいですよね?

 

そーゆー面も含めて、齋藤秀雄の教育法の功罪を科学的に誰か研究してくんないすかね?桐朋学園大学の方なんておやりにならないかなぁ、なんて思うんですが。

 

なお、齋藤秀雄関連の本で最高だったのはこの本です↓

 

何十年も遅ればせながら齋藤秀雄の講義を受けているようで、出版に携わった方々に感謝せずにはおられませんでした。